ken10_1

2020.08.25 21:45

代償ニ。はやかです。

http://img.ske48.co.jp/blog2/ken10_1/159835894015474.jpg
ギ...ギギ..ギギギギ...........カタッ





脱衣場の天井から黒い髪の様なものが少しずつ、ゆっくりと垂れ下がってくる。


気持ち悪い。逃げ出したい。怖い。怖い。怖い怖い怖い。


異様な光景に吐き気がする。


長い髪が床すれすれまで降りてきたところでナニカが天井から見えだした。ドロドロに溶けて茶色く変色した皮膚の下に、赤黒い肉が剥き出しになっている。目らしき部分は溶けた皮膚でグチョグチョに潰れていて眼球はもう見えない。


顔らしきものが天井から逆さになり、こちらを見ている。目が合っているかどうかは分からないが確かにこちらを見ている。


ア゛...ア゛ア゛...ア゛...


何か言ってる...?


...ん...足が動かない。.....う゛ぁぁぁ...!!!足に...足に髪の毛が....絡み..ついてる....!!!!


嫌だ!!嫌だ!!!助けて...!!!!





カエ....テ....ヤ......ソク...カ...シテ....





ナニカの目らしきところからは薄茶色の液体が額まで伝い髪で覆われた床に静かに落ていく。


その姿は見ているうちに恐怖から不憫へと変わっていった。きっと俺にはどうすることもできないモノだ。哀れむことしかできない。本当に不憫なモノだ。





カエ.....セ








っ...!!!!


っはぁ...はぁ...


俺は汗でぐしょぐしょになっていた。人生で1番最悪な目覚めだ。


結局指が見つかったあの後、友人にすぐに電話をしてその夜はネカフェで寝た。次の日には業者さんみたいな人達が来て点検したが他に指は見つからなかったみたいだ。そして俺はそんな気味悪い場所に居るはずもなく、とっとと荷物の整理をして帰ろうとしていたところに友人が近くのファミレスに呼び出して焦せりながらせがんできた。


お願いだよ!!あともう2週間程度だろ?他にはもう見つからなかったみたいだしさぁ...!


お前頭おかしいんか?!あんなトラウマ植え付けられてあと2週間もこんな所に住めるわけねぇだろ。つかあれ警察には...


40万っ!大家さんが1ヶ月住んでくれたら40万払うって!


....安いわ。もう行くからな。


待てって...!お願いだよ....お前が出てったら...俺があそこで寝なきゃなんだよ...


そいつは今までで見たことがないくらい情けない顔をしていて、今にも泣きそうだった。


そういやこいつホラー映画とかも絶対見れないほどビビりだっもんな。


...お前めっちゃキメェ顔してるよ今...その大家にどんな弱み握られてんだよ!はははっ!


......


お前が大家にどんな借りがあるのか知らねぇけど、俺に迷惑をかけたのも事実だ。


うん...ごめん...


そんで更に俺にもまた借りができたな。借金まみれになるやつの仕組みが分かったよ。


...え、あと2週間住んでくれるってこと?


その大家に借り返したら次は俺にもしっかり返してもらうからな。





かっこつけてみたはいいものの、その後3日間もこんな調子で気持ち悪い夢を見ては目が覚める。多分自分が思っていた以上にあの出来事がショックだったんだろう。


ただ目覚める直前に聞いたあの言葉が耳から離れない。


返せ?って言ってたのか?


妙にリアルでただの夢でも気持ち悪い。まずここの大家はどうなってんだ? あの出てきた指も警察に報告したか確かではない。してたとしたら1回警察が来てもおかしくないだろう。


まぁそのへんは関わらない方がいいんだろう。なんにせよ悪夢を見る以外には特に支障はない。大丈夫だろう。


そう思っていた。





それから数日後の夕方頃だった。


やっべ...洗濯物取り込まなきゃじゃん...


先輩と飲みに行く話をしていたが、夜から雨予報がでていた為、一旦家に帰って洗濯物を取り込む事にした。


ただいまー幽霊さーん...なんつって


ここではまじで洒落にならないからやめとこ。さっさと洗濯物取り込まないと...


急ぎ足でベランダの方へ向かってカーテンを開けたその時。





ひぃっ...!!!!


びっくりして尻餅をついてしまった時には既に見えなくなっていた。だが確実にそこに見えた。


カーテンを開けた瞬間、目の前のガラス越しには黒髪の女が立っていた。その距離は僅か30cmあるかないか。女は青白く、白い着物に赤い袴を履いていた。そして胸元で掴んだ右手首の先には指がなかった。


俺は財布と携帯だけを掴んで急いで外に逃げ出した。靴の踵を踏みながら必死で階段を降りた。


走っていた俺はふと何かに呼び止められたように右を向くと、セミがうるさく鳴いていた。そこには雑木林に囲まれた神社があった。そういえば近くに神社もあったな。


石柱には神社の名前が書いてあった。





指切り神社...










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