ken10_1

アイス。#1 はやかです。

「残念ながら...娘さんは...

「アイスキ病」です...」

隣に座っていた母は泣いた。
私は呆然としていた。

まさか私がそんな難病にかかるなんて思ってもいなかった。


アイスキ病とは約10年前に日本で初めて発見された病だ。
症状は、アイスが食べたくなると宙に浮いてしまうというものだ。

ああ、馬鹿げているにもほどがある。
ネーミングセンスの欠片もなければ、奇病すぎるにも程がある。
ただ、この病は本当に存在するし、近年この病に悩まされる人達が増加している。
そして10年経った今でも世界中がパニックに陥っている。
未だ治療法は見つかっていない難病だ。


「先生...!では娘は...娘はどうすれば...!!」

「...アイスを食べ続けるしかないでしょう...」

「そんな...」



それから私の生活は大きく一変したと思いきや、そこまで変わることは無かった。
ただアイスがより身近になっただけだ。

外に出る時は小さい保冷パックに、アイスキ病患者の為に開発された糖分控えめで溶けにくい小さなキューブのアイスを入れ、持ち歩く。

アイスキ病患者が浮いた時は、他の人間に足が地に着くまで引っ張ってもらうか、アイスを食べるかで解決する。

いたってシンプルかつ厄介な病だ。


そして、これから私が安全に生きていくために持たなければいけないものが2つある。


1つがアイス。

2つ目が


何があってもそばに居てくれる人だ。