SKE Blog

最後の、はやかです。

五十嵐早香

2022.02.28

まさか自分の最後を綴る日が来るとは思わなかった。


同期の最後は長々と書いてきたが、自分となると恥ずかしくてお涙頂戴の文章を書く気にはなれないものだ。


取り敢えずこの2年間の最初を振り返ってみよう。



思い出してみよう、オーディションの時から。



きっかけはメイド喫茶から始まった。


毎年夏休みの期間には1ヶ月ほど日本に帰国をしていた。

17の夏休み、せっかくなので人生初めてのアルバイトを私は秋葉原ですることにした。そしてそのバイトがメイド喫茶のメイドだった。


その時期は日本も夏で、肌がジリジリと痛むほどの太陽の下でチラシを配り声をかけ、やっとの事で客を捕まえた。


その客を店内に案内し、ドリンクを提供している時だった。

客の男はおもむろにヒビの入ったCDを机に置くと、ニコニコした顔で話しだした。


「SKE48って知ってる?」


どうやらこの男はSKE48の熱烈なファンのようだ。

色々なグッズがカウンターテーブルを埋めていくが、生憎店にはその客しかいなかったので問題なかった。


そしてドリンクを1杯飲み終わる頃に男は言った。


「今さ、SKEのオーディションやってるから応募してみない?」


そう言ってCDのみをテーブルに残し、男はまた炎天下の中に去っていった。

その時は特に深く考えずにCDを鞄に入れ、仕事に戻った。


家に帰ると昼に貰ったCDが鞄からでてきた。

その時、フィリピンでアイドル活動の様なものをフィリピン人の女の子たちでやっていたのもあり、改めて考えてみた。




趣味でやっていたものを仕事にしたいか、優柔不断な私にしては決断が早かった。


本気でアイドルになろうと思った瞬間だった。



これからたくさんオーディションを受ける覚悟で、取り敢えずSKE48のオーディションを受けてみた。



そしたら1発で合格してしまった。 


これが間違いだったのかもしれない。

もっと苦労して合格していれば良かったのかもしれない。


なんて今は思うが、その時は本当に嬉しかった。

3000人以上の中で私が受かるなんて考えられなかった。

合格発表されて1週間で荷物をまとめ、ほとんどの物をフィリピンに置いて父親と二人で日本へ来た。


色々と面白いものがありオフィスは少し奇妙だったが、先輩達が出入りするそこは秘密基地のようでワクワクした。



日本で暮らせる部屋を探したがなかなか難しく、最初の2ヶ月ぐらいをほとんどカプセルホテルで過ごした。


レッスンはすぐ始まり、はっきり言って地獄のような日々だった。

だがこれから先に期待と夢を膨らませていた私達にとっては耐えれるものだった。




毎週火曜日のレッスンの後は1人で近くのネカフェに行き、一人カラオケをした。


オーディションの時に歌った「ジワるdays」を泣きながら歌い終えると、ゴールデンボンバーの「優しくしてね」を熱唱するのだった。


1時間歌い終えると電車に乗り、椅子も机も無い冷たい部屋に帰った。

毎週行くカプセルホテルが何も無い部屋よりも比べられないほど心地がよく、ご褒美だった。




分からない。こんなに苦労して乗り越えて、やっと手に入れたものを自ら手放すなんて想像できなかった。今だって信じられない。

あんなに流した涙はどこへ行ってしまったのだろうかと思うほどだ。


いつかきっと後悔する瞬間はあるかもしれない。

それでも自分の決断を否定したくはない。



おっと、いつの間にか歌詞みたいになっていた。

相変わらず気持ち悪い文章を書くものだ。

それでも最後に残したくなるのは私がわがままだからだろう。


みんなの中の五十嵐早香はせいぜい1ヶ月で消えてしまうだろう。

ただ私の中のみんなはきっと、私がおばあちゃんになっても存在する。


この2年間を定期的に思い出すのだろう。


家族の名前を忘れてしまうまで、覚えていたい。


書きたいことはまとまっていたのに、こうしてどんどん感情的になって内容がバラバラになってしまうのさえ懐かしい。


初めて奇妙なブログを書いた時もこんな感じだったかもしれない。

普通のブログを書いていたのにいつの間にか楽しくなってサイコホラーになっていた。


文字を書いている時は大きく感情が動かされる。

この感覚がもう既に懐かしく感じてしまうのがなんだか悲しい。




今日までのことは昔話になってしまうが、決して夢だったわけではない。


あと数時間だけ、私のことを思い返してほしい。

その後は消してしまっても構わない。

あなたの中の私はどんなアイドルだったんだろう。

あなたに貢献できたことはあるのだろうか。

少しでも笑わせることがてきたのだろうか。


あの時自分のサイリウムを振ってくれてた人達は今、どんな感情で読んでいるのだろうか。

明日からどのくらい、私のことを覚えていてくれるのだろうか。


きっと私と比べたら短いかもしれないが、推していた事実は動かない過去だ。

それだけで私は嬉しい。

一生に一度しかない瞬間を私に注いでくれた。



普通の女の子にならなくてよかった。




2年間、応援してくれてありがとう。


ずっと覚えてるよ。

みんなが大好き。




またどこかで。